劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」感想。【初日舞台挨拶メモあり】
公開初日に映画館で見てきました、劇場版「冴えない彼女の育てかた Fine」。
追いかけてたアニメが劇場版になるのは自分の中ではけっこう珍しいので、とても楽しみにしてましたが、それを上回る位の完成度で素晴らしかった。
アニメ版を見た人は絶対に見た方が良い、と言える作品に仕上がっております。
丸戸史明氏の脚本が冴えに冴え渡っておりました。
さて、ここからはネタバレあり感想です。
icy tailのライブシーン
1期、2期の0話と同じノリの昨今のアニメ話から始まるのかと思いきやいきなりライブシーンからスタート。
1期ラストがライブだったので劇場版でも、ということなのか。
パンフレットを見てみると、昨今のアニメ劇場版について語るシーンは没ったらしいです。
スタッフロールを見て気付いたんですが、icy tailのモーションアクターはF チョッパー KOGA率いるGacharic Spinだったんですね。バンドマン的には豪華。
焼き肉屋での打ち上げに紅坂朱音が乗り込んで来るシーンでは、小説版の合宿がバッサリカットされた都合かな。カットしたシーンを本編に別の形で出すってなかなか難しいと思うのですが効果的にやってるなぁと。個人的には詩羽先輩が打ちのめされるシーンも見たかった。辛いけど。
英梨々と詩羽の二人がモブ扱いされている、スタッフロールでも最後の方にされる、って言ってましたが本当にスタッフロールでフラグ回収していて草でした。モブより下にいました。
オナニーしろ少年のとこ
シナリオに詰まって紅坂朱音に電話で聞くシーンは直接会って話しをするシーンになってましたね。オナニーしろ少年、ってのがすげーテンションで好きでした。
あそこでかかってた曲、有名な洋楽のオマージュだと思うのですが思い出せなくてめっちゃもやっとしてます。誰か分かったら教えて欲しいです。
【追記】
ようやくわかりました。Bill Withers の Lovely Dayでした。冴えカノ1期5話のショッピングモールでも流れてた曲ですね。ベースラインが特徴的。
加藤恵の本気
そっからしばらくは小説11巻7章の「恵派の人はここに栞を挟みっぱなしにしておくのがいいかと」のあたりがねっとり描かれていました。
倫也と加藤のイチャイチャシーンをこれでもかと言うくらい見せつけられて、英梨々派の僕としては、ぐぬぬ状態でしたが、全視聴者を加藤ファンにしたいとしか思えないくらい激甘でした。悔しいけどよかった。キュンキュンさせられてしまった。
駅で手を絡ませるシーンは手の動きと台詞だけでもうただただエロでした。有名なセーラームーンのはるかとみちるのやつみたいな。この辺は映像があることの強さですね。
全体的に冴えカノは足!とか手!とかタイツ!とか一部の部位を強調したシーンへのこだわりを感じて非常に良いです。詩羽先輩なんて顔よりタイツの方がしゃべってるんじゃないかってくらい。
正妻戦争の決着
僕の一番好きなガールズサイド3の「ルートを譲らなかった彼女」の『倫也は特別じゃなくて普通だったからよかった』というシーン、最初あっさり終わったなぁ、と思ったら、後半を分割してキスシーンの後に持ってくるとは。感情を色んな方向に持ってかれすぎて「あー!!!」って叫びたいくらいでした。映画館だったので黙っていました。
なぜ同じシーンを小説と違うアプローチで使って全体としてバランスを崩さずにやれるのか。丸戸史明すごすぎる。
詩羽のヒロインは英梨々だった。
自分たちの作品を完成させるために、倫也の恋を応援する、と覚悟を決めたところの詩羽と英梨々は本当に切なくなった。
ここで倫也に頼ると、恵ルートに入ってしまうっていう表現が、まさにオタクの恋愛だからこそ、っていう感じでグッときた。ここで倫也に頼る=恵ルートに入るための「転」になる、っていうことで。
小説版でも感じていた、リアルとゲームが交錯しながら話が進んでいって、読者も自分の立場をどこに置いたらいいのか分からなくなるあのふわっとした感じがここでも感じられました。
ゲームが完成したあと「10年前、私のこと好きだった?」っていうシーン、小説でも悶絶しましたが映像がつくともうだめでした。泣きながら笑ってる英梨々の表情のクオリティが。映画館ではあんまり泣かない派ですがちょっとだけ泣きました。
詩羽先輩の「私のこと好きだった?」はカットされていたので、ちょっとだけ英梨々よりな脚本で僕は嬉しかったです。まぁ詩羽ルート(みたいなやつ)は漫画で出てるからな!
ラストの泣いてる英梨々を抱きしめる詩羽もね、本当によかった。
全体的に詩羽先輩の強さが描かれてましたね。小説だと弱ってるシーンも多かったけど、これが作者の選択ということなのでしょう。
僕は今回英梨々ルートが描かれる可能性を信じてたのですが、大西沙織さんの事前コメントで、「原作を最後まで描く」と書いてありあっさりと打ち砕かれたので、それほど悲しまずに最後まで見れました。英梨々はかなり大事にされていた印象でしたね。
エピローグの遊びがやばかった
スタッフロール後にも何かあるぞ、というのは事前の情報でもあったので、楽しみにしていたのですが、やってくれましたね。
スタッフロールで「挿入歌 ラブストーリーは突然に」って書いてあって、あれ、どこで流れたっけ、と思ってたら詩羽先輩の次回作のプロットとは。どうしてもスタッフロールが先に流れてしまうからしょうがないのですが、見てなかったらもっとびっくりできたかもなぁとも。
伊織の扱い酷すぎて笑った。ボロボロになってもクリエイターでありたい、というのがこの歳になっても音楽やってる自分とちょっと重なるところがあって切なくもあり。冴えカノを見に来てそんな方向から刺されるとは思ってませんでした。
大人になったメンバーのデザインも素敵でしたね。パンフによると深崎さんのデザインみたいです。髪型だけじゃ無く表情もちょっと大人っぽくなってて、この先もアニメやってくれないかなぁと思ったり。
映画が終わった後の舞台挨拶も結構いい話がいっぱいあったので、面白かった会話を書き起こしておきます。
舞台挨拶
キャストが全体を振り返って
・松岡「爆ぜろ」
・安野「深崎さんのポスターが欲しくて昨日の夜バルト9に買いにきた」「ガールズサイドの『倫也くんは私のだよ』を言えてよかった」
・大西「英梨々に試練がすごかった。詩羽先輩なくしては乗り越えられなかった」
・茅野「詩羽のヒロインは英梨々」
・矢作「シリアスシーンが多かったので、美智留と出海はゆるい空気を保つ役割としてよかった」
・赤崎「テレビよりたくさん出たので出海ちゃん大躍進。出海が頑張ってみんなのバランスを撮っていた」
いっせーの、でキスするシーン
・アフレコでは上手くいかずやり直したのがリアル感があって良かった。
・赤崎「車通れ!と思った」
・松岡「BLでは良くあるけど男女でやるのはそうそうない」会場ざわつく
・安野「私の初めては松岡さん」
・大西沙織はまだ守っているらしい。
恵がサンドイッチを作るシーン
・矢作「嫁か、嫁でもパンの耳切ったりしないわ」
・食べかけのサンドイッチを食べるところ、ト書きに「もったいないから」って書いてあった。
エピローグについて
・ラブストーリーは突然に、は似た曲を用意するということだったが、許可が取れたらしく本物がかかっていた。
・丸戸さんゲーム出ないんですか
アドリブについて
・焼肉焼いてる時の倫也と出海のガヤはアドリブ
・全体的にセリフが多くてアドリブを入れる隙間がなかった
小ネタ系
・紅坂朱音の車のナンバーは公開日
・アフレコは2日間
舞台挨拶の感想
声優さんの舞台挨拶って見たのは初めてだったのですがみんなやっぱしゃべり上手いですね。それに作品の大事なところがどこか、きちんと理解して演じてるので、俺が良かったと思うシーンは大体舞台挨拶で語られつくしてました。
あとキャスト全員キャラのイメージカラーの服を着てたのがなんか素敵でした。松岡さんは蝶ネクタイがきつい、って言ってて草でした。
最後にコメント求められた時にはみんな何度でも見に来て!って言ってて、プロモーション上手だなと思うと同時に確かに何度も見に来ないと細かいところ見切れないわ、ってくらい作り込まれていたので、1回見れば十分かな、と思っていた僕も何回も見に行くと思います。
本当に良い作品でした。
劇場版全体について
2期のラストが、原作と違って英梨々と加藤が和解した状態でサークルを抜けるシーンで終わっていたので、劇場版はどんな流れになるのだろう、とワクワクしながら見に来たのですが、本当にきちんと原作の最後まで描かれていて、よくこの映画の短時間に原作6冊+αを凝縮してまとめたなぁと思いました。
クリエイターとしての辛い思いをするシーンは結構あっさりとしていたので、その辺のエグさを感じたい人は原作、もうすこしライトに楽しめるのが劇場版という感じでしょうか。
それにしても映像になるとビジュアルで攻めてくるのでキャラの可愛さがより引き立ちますね。英梨々派の僕としてもだいぶ加藤にしてやられた感じがあります。
劇場版で終わってしまうのは悲しいですが、原作に無かったエピローグも追加されて、スッキリ完結したので、自分にとって大事な作品になりました。
……でも英梨々ルートだけはどっかで実現して欲しい。なんとかならないだろうか。冴えない彼女の育てかたエクスタシーとか出ませんかね。
最後に作品全体について。
「冴えない彼女の育てかた」という作品は、主人公がオタクで、美少女クリエイターたちとゲームを作る、っていうクリエイターになりたいオタクの妄想を素晴らしいクリエイター達が形にしてくれたっていう点に感謝しかないです。
オタクって、自分自身をキャラとしてメタ的に自分を見てるところがあるので、作中でもキャラ達がそういう発言をしているリアル感とか、そのキャラ達が自分たちをモデルにしたゲームを作るというさらにメタな構造。
アニメを見て続きが気になって原作を買った上に、ここまで追いかけた作品は久しぶりです。今度は丸戸史明氏のゲームもプレイしてみようかな、と思ってます。
オタク特有の早口で長々と書きましたが、最後まで読んで下さってありがとうございました。
クリエイターの端くれとして、この作品へのリスペクトを込めて演奏しました。僕はベースを弾いています。
【追記】
この後も特典目当てで何度も見に行ったので、小ネタ系をメモしています。よかったらこちらもどうぞ。